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フランス出版業界の革命児・Vincent Safrat

2017年06月27日(火)


「読むということは、旅立つということだ」。

 

これは、学校を通じて恵まれない子供たちのために本を80セント(約100円)で売り、本の市場に革命を起こしている男・Vincent Safratの言葉です。

 

 

見本市「若者たちの絆、本のサロン」の枠内で設けられたNPO、Lire c'est partir (読むということは、旅立つということだ)のスタンドには、パリ18区の子供たちが押し寄せていました。

 

 

スタンドのびっしり積み上げられた本を手に取るためです。

 

あまりにも多くの人が集まっていて、とても本まで手が届かないくらいの人だかり。

 

どのサロンでも、2000冊くらいの本があっという間に売れてしまうのです。

 

ソフィーが『白雪姫と7人の大男たち』を手に取って読んでいるし、ポールは、『見習い三銃士』の本のイラストレーターにサインをしてもらうために列を作って待っています。

 

 ある子どもは嬉しそうに言いました。

「おじさん、僕2ユーロしか持っていないから、今40セント取りに行ってくるね。そうすれば3冊目が手に入るんだ!」。

 

こうして見本市で並べられた1冊80セントの本は、環状道路から次ぐ近くの郊外Saint-Ouen との境にあるこの恵まれない地区に住む多くの人々に幸せをもたらしました。

 

 

 サンジェルマンデプレのインテリたちとはほとんど縁のないVincent Safratは、2016年だけで250万冊の本を売上ました。

 

その秘訣は、他社ではとても競争できない、1冊80円という単一価格です。

 

 

現在、フランスの児童向けの本の平均価格は7ユーロ(約875円)ですが、彼はそれを単一価格80セント(約100円)で提供しています。

 

この強引ともいえる経営では、売価の60%は販売のために使われています。そして、従来の販売ルートを使わずに自分たちで販売を行うことで、必要経費を徹底的に削減しました。

 

フランスでは、紙表紙の約160ページのポケット版(文庫本版)ならば、製造費は30セント(約375円)です。出版社のマージンは平均すれば30%くらいですが、「読むということは、旅立つということだ」ではこのマージンが0となっています。

 

 

創設者のVincent Safratは、自身がパリ郊外の Essonne で育った独学の人です。だいぶ遅れてフローベールの『感情教育』を読んで、読書に目覚めたのでした。

 

彼は言います。

「僕は読書というものが勉強にとってかわることができると思う。それで読書をしない人に、本を読むことを教えてやろうと考えたのさ」。

 

 

彼は出版の世界に入り、1992年には、各出版社を回り売れ残って処分される運命にある本を回収し始めました。そして週末には、恵まれない地区の各戸を訪問して無料配布を始めたのです。

 

「子供たちの両親の感謝の気持ちが伝わってきて、僕の方が感動したよ。彼らにとっては、本というのは、学校での成功のシンボルだからね」

 

 

こうして地道な活動を続け、ロベール・ラフォンのような出版界の重鎮のサポートも得たのですが、売れ残り処分される本を提供してくれる企業もそれほど増えませんでした。

 

 

そんな中、1998年には古本事情に詳しい友人が彼に説明しました。

 

「ポケット版の本は制作するのに1フランとかからないんだよ」。 

 

 

こうして、Vincent Safrat は躊躇することなく、自分で印刷することを決心したのです。

 

 

 当時、最低生活保障受給者だった彼は、この事業を始めるにあたり、40万部を4か月以内に売らなければならないというリスクを負いました。

 

この大胆なアントレプレナーは言います。

「印刷製本屋さんが僕を信用してくれたのさ。そして彼はそれを後悔していないよ。僕は遅れることなくちゃんと支払ったからね」

 

 

次に彼は学校が書籍を充実させるのに必要な予算を十分持ってはいないと気づき、学校を自分の流通経路の中心に据えようと考えました。

 

先生たちとコンタクトを取るのに、彼は教育省の監査官と連絡を取ったのです。

監査官は彼の計画にすっかり魅了されて、大変好意的で協力的になりました。

 

 

こうして、教育委員会お墨付きとなったことで、学校の本の購入と同時に、恵まれな地区の子供たちの両親のために、本の販売をオーガナイズしてもよいということになったのです。

 

 

自分の理念を実現するため、彼はこうした活動を無報酬で5年間続けました。

 

 

物事は少しずつ動きはじめ、彼の出版社で出版をする作家も集まってきました。作者たちは出版部数が多いのでそれ相応の報酬が得られるのです。

 

現在130のタイトルが出版されていますが、その大部分はオリジナルの作品です。著作権のなくなった古典のほうが安く出版できるのですが、現代作家の作品のほうが本を読んだことのない子どもたちは親しめるのだといいます。

 

 

この8セントの出版と同時に、 Vincent Safrat は、パリ19区にある Cité rose の中の自分の倉庫(ここも一般に開放されている。)で子供たち相手に、本をテーマにアトリエをやっています。

 

作家の Alexandre Jardin は言います。

「彼は市場の経済原理に革命を起こした。なぜなら、彼は今までにはなかった論理で考え行動したから。」

 

 

この作者もNPO 「読むということは、旅立つということだ」の創設者の一人です。

 

 

今日このNPOは12人のメンバーがいて、6台の小型トラックが動き回っています。 Vincent Safrat はやっと自分の給料を取るようになりました。

 

 

テーマ:フランス出版業界、Vincent Safrat