ポール・ボキューズの軌跡

2018年01月23日(火)カルチャー 

今月の1月20日にフランス料理界の帝王ともいわれていたポール・ボキューズが91歳でなくなりました。

 

 

全てが世界化する中で、様々な国のシェフが各国へ進出する時代になりました。

ポール・ボキューズが日本に進出してできた一号店は、六本木のアークヒルズ内の「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・東京」です。同様に提携していたレストランに銀座のレンガ屋がありましたが、いずれも現在では閉店しています。 1970年代の日本のフランス料理に興味のある方は、台東区のビストロ・モンペリエへ行かれると当時のレンガ屋の味をほうふつとさせる料理に出会うことができると思います。

 

  

ポール・ボキューズとヌーベル・キュイジーヌ

1970年代は68年のすべての既成観念をぶち壊してしまおうという学生運動の流れのあった時代です。その波はフランス料理界にも到来します。しっかりとしたソースを使った古典的な、あるいはオートキュイジーヌと言われた料理のスタイルにも改革のなたが加えられました。

 

この頃、料理評論家のゴーとミヨーは、ミシュランのように店の雰囲気やサービスといったものではなく、あくまでも料理の質を問題にしてグルメのガイドブック”ゴー・エ・ミヨー”を出版し、ヌーベルキュイジーヌを進めようとしていました。

 

ここから、ポール・ボキューズ、アラン・シャペル、アラン・サンドラン、トロワ・グロといったシェフたちが活躍する時代となったのでした。特にヌーベルキュイジーヌの中心人物として活躍したのがポール・ボキューズでした。

こうして、ヌーベルキュイジーヌがフランス料理を風靡するようになるのです。ヌーベルキュイジーヌとは、次のような特徴の料理です。ゴー・エ・ミヨーが1973年に打ち出したヌーベルキュイジーヌの基本原則10です。

1.煮過ぎないこと

2.新鮮で質の良い材料を使うこと

3.メニューを軽くすること

4.全てをモダンにする必要はない

5.常に新しい技術を探し求めること

6. やたらと漬け込み、発酵、熟成させないこと

7.やたらと濃厚なソースを作らない

8.栄養学を無視しないこと

9.料理の盛付でごまかさない

10.常にクリエイティブであれ

 

この時代にポール・ボキューズの下で育った次の世代のシェフたちが、現代では再びフランス料理の古典とヌーベルキュイジーヌの統合を試みています。ジョエル・ロビュション、アラン・デュカス、ピエール・ガネールといった人々です。これらの人々の統合フレンチが現代のフランス料理の流れと言えるでしょう。

 

どうなんでしょうか?こうした味付けや料理方法というのはやはりその国の国民性に依存するものなのでしょうか?あるいはその国で手に入る食材に昔なら大きく依存していたのでしょうが、現在のように一年中世界中のものが安価に手に入るようになると、そうした食材がその国の料理を規定するとは考えにくいのでしょうか。

 

  

ポール・ボキューズの人柄

亡くなったポール・ボキューズの人柄を良く表している話を現在フランス料理界のボスといえるピエール・ガネールとマルク・ベイラが語っています。

 

ピエール・ガネール曰く:

僕たちにとってはMonsieur Paul なんです。(※Monsieur Bocuseではないところから、親しみと尊敬の念が両立していることを現している。)フランスの美食のジョニー・アリデーといったところですね。ものの見方が鋭くて直観があり友情ということがわかっている人でした。だから彼は友情のネットワークをすごく持っていましたよ。彼は何事もちょっぴりいたずらっ気を出す人でしてね、いろんな人をごちゃまぜにしてやるんですよ。1965年に私は彼のところで長い研修をしました。彼のカリスマを非常に印象付けられましたね。とにかく彼は自分のしたいことがわかっている人なんですよ。台所では彼は軍人と同じですよ。でも、みんな冗談を言い合って笑いながらやっていました。それはね、ブラッサンスが歌っているように、仲間同士の時代なんですよ。すべてが手回しオルガンの音楽カードのようにきちんと決められているんです。でも、そこにはユーモアがあり、同時に厳密さがあり、寛大さがあったのですよ。彼の料理は決して過ぎ去ったものではなくて、現代のものであり、未来のあるものです。豊かで味わいのあるものなんです。 ポールボキューズはお祭りのセンスがあって好きなんですよね。なんでも演出してしまうんですよ。でも自分は参加しないんだなあ。彼はメディアを操作するのもうまいですよ。彼は純朴のように見えて実は抜け目がなくてね。写真を撮ると、割り込んで中へ入らなくても知らぬうちに中心に写っている。ここ数年の間に彼には何度か会っていますよ。親しく彼と時を過ごしたこともあります。でも彼は自分のうちを洗いざらしにするような人ではないんだね。ちょっと言葉を話し始めると、すぐに巧みに話がそれてしまうんですよ。とにかく彼は全く自由な人で天才ですよ。

 

マルク・ベイラ曰く:

 彼はアバンギャルドな人でしたね。ビジョンのある人でした。彼はものすごく大きな仕事をしたと思います。それで、美食というものを民主化してポピュラーなものにしたのです。彼は土着の人で土を愛していましたね。そう、土に対する尊敬の念を失わなかった。そこから生産されるものを賛美し理想化していたのです。彼はあまりにも現代化した料理というものには反対でした。彼のところへ食べに行くとね、若い人しかいないんですよ。彼のいわゆる懐旧趣味の料理というものがちゃんとモダンな響きの中にあるんです。彼は友人でした。彼はいつも私のそばにいてくれました。私のレストランが火事で燃えてしまった時も私のそばにいてくれました。そして、誰にもそうしたように、私を支えてくれました。

 

 ちなみに、このマルク・ベイラはこんな逸話がある人なんですよ。

ゴー・エ・ミヨーがミシュランのようにガイドを出した時に、20点満点で点を付けていたのです。彼らは20点満点というのは完璧であるということだから、人生に完璧なんてありえないからとうので、20点満点を与えたことが創刊以来なかったのです。 それが、マルク・ベイラのやっている二つのレストランに二つとも20点満点を与えているのです。

ポール・ボキューズがフランス料理の帝王ならば、このマルク・ベイラはフランス料理のモーツアルトといえるのかもしれませんね。

 

 

 

 

テーマ:ポール・ボキューズ、フレンチ、フランス料理、軌跡

 




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