ザルツブルグのモーツァルトの家

2017年05月23日(火) アート 

ザルツブルグのモーツアルトの家で、モーツアルトの次男 Franz Xaver の一生をたどった展示室が公開されました。常設展ですから、皆さんもいつかザルツブルクに訪れる機会がある時にご覧になれます。

 

 

モーツアルトの次男 Franz Xaverの生涯

モーツアルトはその奥さんの Constance との間に6人の子供ができましたが、大人になるまで成長したのは、Carl Thomas と Franz Xaver の二人だけです。そのうちの一人、Franz Xaver は、それなりに音楽の才能のあった人だったようですが、いかんせん、父親モーツアルトが偉大過ぎました。すっかりその影に隠れた存在として、生前もそして死後も、現在まで来てしまいましたね。

 

才能というものは遺伝するものでしょうか?環境が天才を作るのでしょうか?あるいはこの二つの不可思議な相互作用が天才を生み出すのでしょうか?というようなことは、私たちが天才の伝記をひも解くと常に考えさせられることです。現在でも決定的な説はないようですね。

バッハの家系のように、子供たちもそれなりの音楽家として成長した例もあります。バッハの場合には、パパ・バッハが偉大な音楽家であると同時に、良き父親であり教育者であったのではないかと思えるところがありますから、子供たちも持って生まれた才能が開花したともいえるのかもしれません。奥さんのために作曲した練習曲集なども、音楽として素晴らしいものであると同時に、ちゃんと奥さんのレベルにあって作られているという印象を受けますよね。バッハの家族などはむしろ例外で、家族が全員同じように才能を開花させたという例の方が少ないといえるのではないでしょうか。

19世紀の数学者ベルヌーイなどは家族ばかりではなく親戚にも超一流の数学者が出たというまれな例ですね。

 

 

 

 モーツアルトの話に戻りましょう。

 Franz Xaver はモーツアルトがその最後のレクイエムを未完のまま残して35歳で世を去るときにはまだ数か月の赤ちゃんでした。生前には自分の夫モーツァルトが不世出の大天才などとは夢にも思っていなかった奥さんの Constance でしたが、死後急速に高まるモーツアルトの名声に影響されたのでしょうか、生まれて間もないFranz Xaver の音楽教育に急に熱心になります。

「両親の期待に応えられずにがっかりさせるような子供は、不名誉と悲惨な人生を送ることになるのよ。この言葉が私のかわいい息子の耳にいつも響いていますように!」というメモ書きが9歳のFranz Xaver に対して書かれて、それが現在まで残っています。

 Constance は2歳の Franz Xaver にピアノと音楽理論を習わせています。当時最高といわれた人々を先生につけています。その中には、Antonio Salieri もいますが、彼はシューベルトやベートーベンの先生でもありました。 Constance は、今でいう教育ママになってしまったのかもしれません。Franz Xaver がお兄さんの Carl Thomas に家ではよくしてもらっていないとこぼしている手紙が残っています。

Franz Xaver の最初のコンサートは彼が13歳の時です。評判は悪くなかったのですが、とにかく親の威光が大きすぎました。こんなことを書いている音楽批評家もいます。

「モーツアルトという名前が、彼に対してある種の寛大さで接することを要求するのかもしれない。しかしそれは同時に、彼に対する明日へのより大きな期待という重荷を彼に背負わせることになる」

17歳の時にウクライナで、ハプスブルグ家の末裔にあたる娘のピアノ教師となり、ヨーロッパ中を旅すると同時に音楽学校を創設しています。

父親のコンサートを演奏するときには、 Franz Xaver は優れたピアニストでしたが、彼の作曲は当時はあまり成功を得られませんでした。現在少しずつ再評価されつつあります。

彼は才能豊かな優れた演奏家であり作曲家でしたが、天才特有の輝きにかけていたのでした。Franz Xaver 自身もそれを自覚していて、それが彼のコンプレックスになってしまっていたようです。

1842年にはザルツブルグのモーツアルト記念碑の落成式の時の音楽を作曲するように依頼されていますが、彼はそれを断っています。「自分にはその資格はない」。その代わり、父親の未完のカンタータを完成してそれを提案しています。

 

Franz Xaver は1844年にチェコでなくなっています。そこで埋葬されているのですが、彼の墓碑にはこう書いてあります。

「父親の名前が私の墓碑銘でありますように。なぜなら、彼の父親に対する敬愛の念が、彼の人生の本質だったのだから」

 

こうしてみると、バッハとは形は違えど、モーツアルトも子供たちにとっていいお父さんだったのかなあ、と考えることしきりです。 でも少し悲しいですね。この、Franz Xaver さん。自分に与えられた運命をしっかりと正面から見つめて生きるということは、私たちの人生で一番大切なことなのでしょうが、時としてそれは悲しいことでもありますね。

 そこにはモーツアルトの音楽の本質的なメロディーが流れているのかもしれません。

 

 

テーマ:モーツァルトの家、ザルツブルグ、音楽一家、天才




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