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フランスのアート事情①デジタルミュージアム

2017年06月11日(日) 

 

「人々を文化欲旺盛にするにはどうしたら良いか?」 

これは偉大なるフランスの文化大臣アンドレ・マルローを始め、多くの心ある人々が自問した問いです。

 

家庭環境や経済格差に左右されず、自らの人生を豊かにするためにアートは何ができるのか?

アートやカルチャーはどうやって人々に光を与えることができるのか?

そのためにいかなる文化制作、アートマネジメントが必要なのか?

 

こうして問われてきた問いの答えの一つが、今フランスで官民あげて進められているプロジェクト、デジタルミュージアム・Micro Folieにみられます。

 

 

日本語で“デジタルミュージアム”と検索すると、軍艦島のデジタルミュージアム以外は、ほとんどがハードのある美術館が所蔵する作品をネット上で見られるサイトを意味するようです。

 

しかし、フランスのデジタルミュージアムMicro Folieは、日常の空間でのアートのバーチャル体験ではなく、現実の建物の中でデジタルを活用してアートを楽しみ、学び、感じられる形となっています。

 

 

これまでの美術館のイメージを覆す真っ赤なテントのようなMicro Folieの建物の入り口には、約30年前の建築家Bernard Tshumiがパリ北部のビレット地区に作った象徴的な構造物が見られます。

 

その入り口を通って中に入ると、まずカフェがあります。

訪れた人の緊張をほぐし、コミュニケーションが生まれる場となっています。

 

 別の一角にはアトリエがあり、3Dプリンターとセリグラフィーの機械が使えるようになっています。

 

そして、カーテンの向こう側に、デジタルミュージアムの空間が広がっているのです。

 

 デジタルミュージアムには12のスクリーンがあり、それぞれが自分たちあるいは個人が鑑賞したい作品をスクリーンに映し出して活用することができるようになっています。

 

このデジタルミュージアムの計画には、ベルサイュ宮殿、ポンピドーセンター、ルーブル美術館、ピカソ美術館、パリ管弦楽団、民俗博物館などが参加協力しており、ビジターはそれらの作品をスクリーンに映して楽しむことができます。

 

 

生徒たちがグループ学習に利用したり、同好会や友人同士で作品を見ながら語りあったり、一人でじっくり眺めたりすることができる、まさにカルチャーとアートのための空間です。

 

こうして、普段なら接することができないような大きなアート作品や文化遺産を、Micro Folieの形作る非日常的な空間の中でバーチャルな形で体験するのみでなく、スクリーンを通して実際に現場にいる講演者と対話ができるようになっているのも魅力です。

 

このMicro Folieは、ビレットの文化センターの所長である Didier Fusillier のイニシアティブで始まり、agence H20のコンセプトで実現しました。

 

フランスの恵まれない地区にデジタルミュージアムを建設することにより、普段アート&カルチャーになじみのない人にもその喜びを届けようというパッションある計画が動き出したのでした。

 

ここですぐに次の疑問がわいでくると思います。

 

たとえば絵画を理解するために本物の絵画を見る必要はないのだろうか?

 

 

もちろん本物を見ることで初めて大きな感動を味わうことができます。

しかし多かれ少なかれ、私たちはほとんどが、レプリカを見ることからスタートするのです。

教科書や雑誌やテレビを通して、大抵の作品は見ますよね。

そうした複製との出会いがあれば、いつの日か本物と出会って時には、その感動は10倍にも20倍にもなるはずです。

 

もちろん、Micro Folieだけで恵まれない地区の文化の砂漠化が根治するとは言えないのですが、このデジタルミユージアムでの経験が恵まれない地区に住む子供たちに、ある日電車に乗って美術館へ行って本物を見てこようという気にさせるかもしれません。

 

そうすることで子供たちは、自分たちの日常の雰囲気とは別の、もっと広い世界を経験することができ、生まれ持った環境という囚われから解放されるきっかけとなるかもしれません。

 

 

こうしたコンセプトからMicro-Folie は100%無料でオープンしています。

Micro-Folie の建設費は30万ユーロくらいですが、その後の維持費が毎年60万ユーロくらいかかります。建設費は地方自治体が負担しますが、維持費は国が負担することになっています。

 

 

差別や分極化で次第にひびが入ってしまった私たちの社会を再びつなぎ合わせることができるのは、スポーツ、そしてアート&カルチャーなのかもしれません。

 

 

現在パリ、アビニョン、デナンと、フランスの各地の恵まれない地区で建設が進められています。

 

 

また、文化的な意味で砂漠になってしまっている田舎の地区からも、建設依頼が寄せられています。

 

この木曜日には、 Lille の町に二つ目の Micro-Folie が開館しました。

 

こうした地道な草の根的な努力が、歴史的に文化の都といわれるフランスの文化を育てているといえるのかもしれません。

 

 

 

テーマ:MicroFolie、デジタルミュージアム、アートマネジメント、文化の力